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 ニャンと気ままに…♪   

🌸日常生活の雑感と他愛のない詩など小作品を紹介します       comment もお寄せ下さいね。      

4.詩 「富士山が見える」

image富士山

とびっきり冷たい朝だから 
今日は富士山がよく見える
驚くほどくっきりと見える 
あのお山の向こうに側にあるのは
とびっきりの私の故郷だ

そんな富士山の近くにありながら 
故郷からは富士山が見えない
南アルプスへと連なる山々が 
村をすっかり取り囲んでいて
山また山の峰ばかりが 
視界の先をさえぎっているからだ
幼い日の私にとって富士山といえば 
仏間の鴨居にかかった額絵の
ただただ美しいだけの山にすぎなかった

ある日
山仕事に行くという父に連れられて
けもの道のような坂を上った
コナラやクヌギの雑木は葉を落とし 
明るい冬の日差しが
黒いズック靴に射し込んでいた

父は棒っきれを手にして 
この谷川が・・・あの大きなカヤの木が・・・ 
ホレ、そこのくぼみが・・・あの杉山の峰が・・・
自分の山と他人の山との境界の目印だなどど
白い息を吐きながら話しかけてくる

私はといえば 崩れかけた道の斜面にある 
青いロウセキの欠片をひろったり、
椿の小枝を手折ったり 
目白のつがいを目で追ったりしながら
息をはずませていった

突然、先を行く父が足をとめた 
あわてて顔をあげるとこの目に飛びこんできたのは
どでっかい富士山の頂きだった
果てしない青空を背にして 
真っ白に雪化粧したその姿
まるで白い髪を垂らしたダイダラボッチが
突然ヌーッと覗き込んだかのように、
そのあまりにも衝撃的な山頂の姿に 
私はたちすくんだ。
父は私の顔を覗き込んで
「どうだすごいだろう」と満足そうに笑っていた
それが、富士山と私との出会いだった

あれから何度ながめたことだろう 
遠足に行った山の上から…
静岡の美しい山並みのむこうに…
女子高の教室の窓から…
昼休みの職場の屋上から…
東京に嫁ぐ新幹線の窓から…
そして今、埼玉の地から望めるのは 
秩父連山の彼方に見える
晴れた冬の日の富士山だ

「富士」は「不死」であり 「不尽」とも呼ばれていた
幾多の噴火を繰り返しながら 
その高さゆえに 美しさゆえに
永遠の命の象徴として 常に人々のあこがれだった
「福地」と呼んでは豊かさを 
「富慈」と呼んでは厳しさを
「不二」と呼んでは その美しさに畏敬の念を抱いている
日本列島を眺めてみれば 
あまねくお富士さんがひるがえした衣の
すそであったとでもいうように 羨望を集めて
夏も冬も私たちの心を捕えて放さない

富士山には登ってみるがいい 
360度パノラマの雲海の中に立ってみるがいい
比類まれなる富士山でありつづけるために
山肌を転がり落ちる火山岩の欠片を 吹きあげ 
吹き上げようとするのを えくぼのような雪渓に
天をも恐れぬ先人たちの足跡を 閉じ込めておこうとするのを
穏やかな表情で 己の広げた衣のすその隅々まで
見守るかのような雄大な富士の姿を

だが恐れよ!
地中に今も眠りつづけている 巨大なマンモスたちが
記憶しているのは 激しく噴き上がる噴煙と 
灼熱の溶岩を容赦なく降りそそいだ
荒々しい山の勇姿なのだ

繰り返し培われた天地の営みと 
あらゆる自然の驚異のなかで
命が芽生え 命が滅び 
長く 激しく 美しく 哀しく そして何万年
今、富士山は深い眠りのなかにいる
見つづけてきたことを やり続け 
やり残してきたことを語るでもなく 
おごるでもなく 怒るでもなく 飽きるでもなく
ただコンコンと湧き出る命の水を 
惜しげもなく与え続け
奥深い樹林にはひっそりと 
あまたの生命を宿しているのだ

そんな富士山を 私たちは 
心ならずも欺いていないだろうか
恥ずべき行為で報いていないだろうか
謝すべき言葉を忘れていないだろうか
そこここに浮かぶ小島の一つを
静まり返った火口にポイと放り込む
そんな恐れを知らぬ大胆不敵を 
共に許していないだろうか
そうでなければいい 
そうでなければ富士山もまた
マンモスと共にあった頃のように
のびのびと自由気ままな己に戻りたいなどど
思うこともないだろうから
たぶん・・・

霜枯れた関東平野の彼方に
まさかと思えるほどくっきりと
亡母と同じ名前の山がそびえている
刈田の株根にのびた か細いひこばえに
赤城おろしのからっ風が吹きわたって行く
だから 明日の朝も美しい富士山が見えるだろう
いや、きっと見える

※この詩は2008年、静岡県・山梨県による「富士山憲章制定10周年記念ポエム」
 として最優秀賞を頂きました。 審査委員長は「千の風になって」の新井満さんでした。
 応募要項規定に「原稿用紙10枚以内の詩」とあったので、おもいっきり10枚書きました。
 
 私の故郷は静岡・・・それも山梨に近いような山奥です。
 当然富士山はよく見えるとお思いでしょうが、まわりを囲む山に遮られて富士山は
見えません。 そのかわり山のてっぺんに登ると、いきなり富士山の雄姿がドーンと
視界に入りびっくりします。まるで手が届くかのようにすぐ近くにあるようです。
 
※ 富士山憲章とは・・・1998年11月18日に制定されました。
   1 富士山の自然を学び、親しみ、豊かな恵みに感謝しよう。
   1 富士山の美しい自然を大切に守り、豊かな文化を育もう。
   1 富士山の自然環境への負担を減らし、人との共生を図ろう。
   1 富士山の自然、景観、歴史、文化を後世に末永く継承しよう。

※ 富士山の画像はネットから拝借しました。

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