ニャンと気ままに…♪   

🌸日常生活の雑感と他愛のない詩など小作品を紹介します       comment もお寄せ下さいね。      

☆「呼子の笛」

   童話「呼子の笛」

昔々、コロコロ山のてっぺんは高い雲のうえまでつきぬけていて、それはそれは住みよいところでした。 
季節は春と秋だけで、あたり一面に色とりどりの花がさき、小鳥がさえずり、木々や草草は緑の葉を茂らせたかとおもうと、おいしい木の実や果物を実らせてみんなをよろこばせました。みんなというのは・・・まるでコロコロ山のうえに広がる青い空の色に染まったようなたくさんの青鬼たちでした。

青鬼たちの仕事は空の番をすることでした。青い空に雲を広げて陰を作ったかと思えば、雲を払いのけて、地上にさんさんと太陽の光をふりそそがせました。ときには雲のなかから雨や雪やヒョウやイナズマまで降らせたり、夜になるとたくさんの星を空にちりばめたりして、地上に住む人間たちの生活を助けていたのでした。

「おとうちゃん、きょうもみんなで雲を作ってあそんでもいいでしょう?」と青鬼の子どもがおねだりしています。 子ども鬼たちはいつも大人鬼のお手伝いをしていました。そのなかでもとくに雲作りが大好きで、色々な形の雲をつくってはこわし、作ってはこわして一日中遊んでいました。
「そうだな、日照り続きだったから、人間たちもそろそろ雨ふりを待っているだろうし、おまえたちが好きなだけ雲を広げていいぞ」おとうさん鬼が雲カレンダーをめくりながら、まわりの子ども鬼たちに言いました。
「わーい、雲つくろうっと」
子ども鬼たちは、大人鬼たちが雲小屋からひっぱりだしてきた雲をてんでに抱えて、青空めがけて散らばって行きました。さっきまで真っ青だった空に、色々な形の白い雲がもくもくとできていきました。 地上の村々では、人間の子どもたちが空の雲を指差してさけびました。
「あ、モチみてえな雲だ。うまそ~」
「こっちのは、おっかあの顔みてえだ」
「牛もいるだ、いや馬っこかなあ」
「魚だって、ホレ跳ねているみてえだよ」
子ども鬼たちが、あまりに夢中になっていろんなものを作るので、空はたちまち厚い雲におおわれました。

「さあ、もうお前たちも気が済んだだろうから、そろそろ雨にするか。人間のおっさんたちが今か今かと待っているだろうからな」
そう言って雲の中に突き進むと両手両足で雲をけ散らしはじめました。雲はみるみる小さな雨の粒になってポツポツ落ちていき、やがて激しい雨になり、畑や田んぼや野原の緑がグングンと生き返って行くようでした。
雪を降らせるときは、お母さんたち女鬼の出番でした。手に手に小さな編み棒を持って雲の繊維をすくい取り、きれいなレース模様を編んでから降らせます。それはとても細やかな作業なので男鬼にはまねができません。でも稲妻や雷の太鼓は力自慢の男鬼のかっこいいあこがれの仕事でした。
ヒョウは雲をにぎり固めて作るので誰にでもできる仕事です。大人鬼たちはピンポン玉のように、子ども鬼はパチンコ玉のようなヒョウをふらせました。それはとてもとても幸せな毎日でした・

そんなある日、コロコロ山にチラチラと雪がふってきました。春と秋だけだった山に冬がやってきたのです。 雪は毎日毎日ふり続き、花も緑もすっかり雪におおわれてしまい、青鬼たちは寒くて寒くてとても耐えられそうにありませんでした。すると長老の鬼がみんなに言いました。
「こんなに寒い季節がやってきちゃあ、きっと死んでしまう仲間がでてくるにちがいない。そうならねえうちに、寒がりもんは山を下りて里に住んだほうがよいと思うんだが、いかがなもんかのう」 青鬼たちはみんな顔を見合わせてうなずきました。
寒くて死にそうだと思っていた鬼もたくさんいたからです。
そこで寒さに強い鬼とよわい鬼を分けて、コロコロ山のてっぺんと山里とに分かれて住むことにしました。青鬼たちは仲間のしるしにと、雪のうえに伸びていた細い青竹を切って笛をつくりました。遠く離れていても互いに呼び合うことができるという呼子の笛です。
そして別れの朝、鬼たちはお互いの姿が見えなくなっても、いつまでもいつまでも笛を吹き続けていました。

さて、山を降りた寒がりの青鬼たちは、やっぱり山里の冬の寒さにも耐えられそうにありませんでした。といって、人間のように着物を着ることなど鬼のメンツにかけてできません。そのうち鬼たちは、人間が火という便利なものを使っていることを知り、同じように火を作って体を温めようとしましたが、火が消えた後の寒さはもっとつらくなってしまいました。
そこで青鬼たちは冷たい川の水をためてドカンドカンと火をおこし、水を湯に変えてから、その中で体を温めることを考えだしました。ところがあまりに一生懸命に火をおこしたので、鬼たちの青い体がうっすらと赤味をおびてきました。
「さあ、みんな来い来い。骨のなかから芽がでてきそうだあ」青オ二たちは我先にとお湯につかって喜びあいました。
「ああ、なんちゅう心地よさだ、なあ兄弟よ」
「ああ、まったくだまったくだ」
しばらくの間そうして湯につかっていましたが、気がつくと鬼たちの体がいつの間にか湯気のなかで真っ赤に変わっていました。
「ありゃりゃ、こりゃどうしたわけだ」
「まあいいだ。こんな色も悪くはないだ」
「だが、こんな気持のよいものをオレたちだけで楽しんでいちゃいかんよ、なあ兄弟たち」
「んだ、んだ」
というわけで、真っ赤になった鬼たちは、あちらこちらの川の水や地下の水を湯に変えて、人間や動物たちにも使ってもらうことにしました。人間たちはこれを温かい泉・・・温泉と呼んでとても喜びました。
赤くなった鬼たちは「これをオレたちの新しい仕事にしよう」といって、それからずっと、今日も隠れたところで一生懸命にお湯を沸かし続けているのです。

しかしそんな赤鬼たちも、季節がめぐり、冬が来て雪がふる夜はコロコロ山の仲間たちが恋しくなり、山に向って静かに笛を吹きだします。すると山の方からも渇いた風にのって、かすかに笛の音が聞こえてくるのです。
いつか雪が降ったら耳をすましてごらんなさい。
きっと青鬼と赤鬼たちの吹く呼子の笛が聞こえてくるでしょう。

※この童話は、2003年(平成15年)、第2回のぼりべつ鬼の童話コンテストで
優秀賞をいただいたものです。
 鬼って…なんなのでしょうね。 童話にもいっぱい出てくるけど… 神さま? 
悪魔? 恐いもの? 優しいもの? こっけいなもの? 頭いいの? 頭悪いの?
 全部が当てはまっちゃうのがすごいよね。 わたしは…憎めないもの…に一票!

※その後、入賞作品を対象に「紙芝居コンクール」が行われ、芦田真弓さんが優秀賞に選ばれました。
10枚のうち5枚を紹介します。
IMG_2283.jpg

IMG_2284.jpg

IMG_2293.jpg

IMG_2285.jpg

IMG_2286.jpg

スポンサーサイト

このページのトップへ

☆「空を泳いでみたかった」

さわやかな季節です。
空には色とりどりのふきながしとコイノボリが気持ちよさそうに泳いでいます。
コイノボリは一年中箱のなかに入れられていたので、こんな風にさわやかな風をおなか一杯すいこんで、空をスイスイ泳げるのがうれしくてたまりません。
そのときふと、だれかにジーッと見られている気がしました。
カラスかな?と思いましたが、カラスはオットットとコイノボリをよけて行ってしまいました。 風かな?と思いましたが、風はコイノボリのおなかをじょうずに吹きぬけるのにいっしょうけんめいでした。
お日さまかな? と思いましたが、お日さまはあちこちに光をとどけるのに忙しくて、やっぱりそれどころではありません。

コイノボリは、すぐ横をながれている川をのぞきました。
するとさっそうとおよぐじぶんのすがたが水にうつっています。 (ああ、ぼくはなんてかっこいいんだろう) コイノボリはおもわずクルンと宙がえりをしました。
そのとき…水のなかからジーッと見つめている目がありました。大きなコイの目玉です。たくさんの魚にまざって、とくべつ元気そうな鯉がジーッと下から見上げていたのです。
「なんだい?」 コイノボリはききました。
「きみは空を泳げていいなあって見てたのさ」 
鯉はうらやましそうにプクンとあわぶくを一つはきました。
「そりゃあ、コイノボリだからね。きみたち魚とはちがうよ」

「どうしたら空を泳げるようになるの? おしえてよ」 そんなことコイノボリだってわかりません。 でもせっかくほめてもらったので、なにか気のきいたことをいってみたくなりました。
「そうだなあ。いっしょうけんめい練習すればできるようになるかもよ」
「ほんと?」
「むかし、海にいたタツノオトシごゴは空をかける竜になったっていうし、
浜辺のヒトデはお星さまになって…まあるいクラゲはお月さまになったっていうからねえ」
「じゃあ、どうすればいいんだろう…」
「じゃあボクのしっぽにつかまって空を泳ぐってのはどうだい。
ボクがたらしたしっぽの先までジャンプするんだよ。それからおなかを空っぽにしなくちゃね。そうしないと風がおなかをふきぬけることができないだろう?」
「わかった」 その日から、鯉は毎日ジャンプの練習をすることにしました。

1日目は、川辺にはえているキツネのボタンの黄色い花のあたりまでジャンプできました。これぐらいちょっとがんばればできることです。でもコイノボリのしっぽまではまだまだとどきません。
2日目は、ふわふわしたスカンポの赤い花までとどきました。あんまりがんばったので背びれのところがいたくなりました。
3日目はエサをさがして川のうえをとんでいたカワセミの羽にぶつかってしまいました。
「あぶないあぶない」 もう少しでカワセミの長くとがった口ばしでつつかれるところでした。
そんな鯉のようすを見て、川の魚たちは不思議そうに見ていました。それから何日かがすぎると、だいぶ高くまでジャンプできるようになりました。
「もう少しでボクのしっぽにとどくね。でもそんなに重たく太っていては、空をおよぐなんてできないよ」
「それもそうだね」

鯉は、おなかを空っぽにするためにエサをたべるのをやめました。でももともと食いしん坊の鯉にとって、それはとてもつらいことでした。
「水の中にはおいしいものがたくさん流れてくるのに、つまんないなあ」
ジャンプの練習もしなくちゃいけないし、空をおよぐのってたいへんだなあと思いました。コイノボリは風にふかれながら、いろんなことをおしえてくれました。遠くの山なみの雪がとけてきたことや、オレンジと緑色にぬりわけられた電車のことや、野原の花のうえをとびまわるチョウチョや、おかしな虫など、鯉のしらないことばかりです。
鯉ははやく自分の目でいろんなけしきを見たくて、毎日むちゅうでジャンプの練習をしました。でもおなかがペコペコなので、ときどき(もうだめだ…)とおもいました。

ある日コイノボリがいいました。
「もうすぐ5月5日の子どもの日がくるんだ。それがすぎるとボクたちコイノボリはまた箱に入れられて、来年まででてこれないんだよ」
鯉はびっくりしました。コイノボリはいつまでも空をおよいでいるとおもっていたからです。
「だからね、そろそろボクのしっぽにつかまって空をおよいでみないかい?」 コイノボリがいいました。
でもそのとき鯉は、とってもはらぺこで、体中がいたくて、死んでしまいそうなほどクタクタにつかれていました。
「なんだか自信がないよ」
「そんなことを言っていたら、いつまでたっても空をおよぐことなんてできないよ。とりあえずちょうせんすることだね」

コイノボリは、鯉がとびつきやすいようにしっぽを低くたらしました。そう言われたらやるしかありません。鯉はやっと空をとぶ決心をしました。
1回目のジャンプをしました。でもぜんぜんまったくからっきしコイノボリのしっぽにとどきません。
「がんばれ!」 川の魚たちもおうえんしています。
2回目、鯉は川上におよいでいくと、そこから流れにのって勢いをつけてジャンプしました。しっぽの先にちょとだけさわりました。でもしっぽを口でくわえるのをわすれていたので、川にポチャンとおちてしまいました。
3回目、鯉はありったけの力でジャンプして、とうとうコイノボリのしっぽにくいつきました。そのしゅんかん、つよい風がふいて、鯉はコイノボリといっしょにふわーっと空にまいあがりました。
風がびゅんびゅんうなっています。鯉はしっぽからふりおとされないように、むちゅうで歯をくいしばりました。
「どうだい、とおくのほうまでよくみえるだろう?」 コイノボリがききました。
「う・うーん」
「とってもきもちがいいだろう?」
「う・うーん」
それにしても鯉くんは重たいねえ。しっぽがちぎれそうだよ」
「う・うーん」
「う・うーんばっかりだね」
「う・うーん」
「ちゃんと体に風をいれているかい? 
ボクのように口を大きくひろげないと、風がからだをふきぬけないからねえ」
鯉は(それもそうだな)と気がついて、口を大きくあけました。そのとたん、鯉は空にほうりだされて川の中におちてしまいました。

魚たちはびっくりして、それからゲラゲラと笑いました。
「あ。ごめんごめん」 コイノボリはあわててしっぽをたらしました。
鯉はかっこよく空を泳ごうとおもったのに、かっこ悪いったらありゃしないと、プイッとよこをむきました。
「空をとんでみてどうだった?」コイノボリがききました。
「どうって・・・空をとぶと口がいたいし、つかれるし、はらぺこだし、
おっこちるし、わらわれるし、めちゃめちゃ目がまわる」
鯉はふくれたままいいました。「そう。で、どんな気持だった?」
「気持なんて考えているひまはなかったさ」「ふーん、それで、なにが見えたの?」
「なにって、とにかく風が目にしみるもんだから、きみのしっぽしかみえてなかったよ。
けっきょくボクなんか空をとぶしかくがないって、きみだってわらっているんだろう?」
 鯉はふきげんそうにいいました。
「なにいってるんだ。きみはピカイチ、ほかのどの鯉よりもえらいよ」

「えっつ、ぼくがピカイチ? どうして?」
「だって鯉が空をとぶと、口がいたいし、つかれるし、はらぺこだし、おっこちるし、わらわれるし、目が回って気持なんか考えてるひまがなくって、風が目にしみてしっぽしか見えないなんて・・・キミいがいのだれがいったい知っているんだい? ほんのちょっとだけでも空をとべた鯉なんてどこにもいないと思うよ。
それにエサもたべないでジャンプの練習をして、そんなにクタクタになるまでがんばったじゃないか。キミは世界一の鯉だよ」
するとまわりにいた魚たちも、そうだそうだといいました。鯉はうれしくなってかるくジャンプしてみせました。すると魚たちもいっしょになってピチャピチャピョンピョンとはねました。
コイノボリは、もういちど空をとんでみるかい? とききましたが、鯉はもうこりごりだとおもいました。
それよりも、空のうえからいっしゅんだけ見えた、もうひとつの大きな川に行ってみたいなあとおもっていました。


※2008年、「リブラン創作童話」で佳作入選した作品です。この入選のハガキが届いたのは5月3日、
 隣町の加須市で100メートルのコイノボリが大空を泳ぐ姿を見て家に帰ってきたときでした。
 審査員の先生が「このお話の最後部分はうまいねえ。 続きのストーリーを予感させるようだよ」と。

このページのトップへ

☆「ねこようび」

太郎はこたつのなかでウトウトしながら、テレビの声をきいていました。
「みなさん今日は2月29日の土曜日、明日はもちろん30日のねこようびでーす」
(えっ、今なんか変なこといった・・・) 太郎はそれでもぼんやりしていました。
テレビの声はまだ続いています。
「ではみんなで言ってみましょうね。はい、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、
金曜日、土曜日、ねこようび、はい、よくできました。では楽しい一日をすごしてください。
さようなら」太郎はこたつですっかり深い眠りにはいっていきました。

朝になりました。
太郎は目がさめると、ふとんからはいだして背伸びをしました。
「あ、あー、きもちいいなあ」 そして思いっきり指の先まで伸ばしたとき、バリバリッとたたみをひっかいてしまいました。
(あ、いけない。爪がのびていたんだ) あわてて指の先を見ました。
(うわーっ、なにこれ・・・) 太郎の目のまえにあるのは、毛むくじゃらのけものの手と長い爪でした。太郎はびっくりして、台所にいるお母さんのところにとんでいきました。
「おかあさん、たいへんだ!」
ところがお母さんは太郎を見るなり包丁をなげだしてにげました。
「きゃー、ねこねこ。 おとうさーん、どこかの猫が家にはいってきちゃった」
ねこ嫌いのお母さんがさわぎました。
「お母さん、ぼくだよ」太郎はあわてて言いましたが、その声はニャーンと猫の声でした。お父さんがやってきて、やっぱり太郎をおいかけました。
「こら、野良ネコめ、しっしっ・・・」
「ぼくだってば、おとうさん」太郎は必死になってお父さんの足の膝にとびつきました。
「うわー、なんて図々しいねこだ。やめろ、こいつめ」
とうとうお父さんは、ネコになった太郎の首をつかむと、家の外に放り投げました。
太郎はわけも分からずニャーンニャーンと鳴きながら走りました。寒い朝です。

ネコになってみると、町の景色がいつもとちがって見えます。車も人もポストも建物も、とんでもない大きさに見えました。角をまがると、そこにはいつも友だちと遊んでいる公園がありました。ネコがいました。しま模様のとらねこがいました。黒いブチねこ、三毛猫、灰色ねこ、シャム猫もいます。気がつくとあっちにもこっちにも、ぜんぶで30匹くらいが集まっていました。
(へー、野良ネコってこんなにたくさんいるんだ)
太郎はじぶんがねこだということを忘れて、ねこたちを遠くから観察していました。
(あれ? じゅんちゃん…みつる…きょうこ…けいいち…)
よく見ると、ねこたちがぜんぶ友だちの顔にみえてきました。するとねこたちがつぎつぎと太郎のまわりにあつまってきました。

にゃーん (よう太郎、やっぱり来たな)
ミャミャーん (わたしもびっくりしたわ)
ニャニャニャ (ねこようびの集会だってさ)
そうやって話しかけてきたのは、みんなクラスの友達でした。
「どういうことなの?」 目の前のじゅんにききました。
「2月はな、ふつうは28日までしかなくて、29日まであるとうるう年ってい
うのはしっているよな」
「もちろん」
「ところが、うるうる年っていうのがあってさ、それが今日の2月30日なんだって」
「2月30日なんてきいたことないよ」
「でしょう? わたしだってはじめてよ」 きょうこネコがひげをなでながらいいました。
「それで?」
「うるうる年の30日には、子供が動物の気持になる日で、今日はネコの日なんだって」
「この前は犬の日だったそうよ」
「そうそう、何年か前の2月末に町中にノラ犬があふれたっていうニュースを
きいたことがあるだろう? あのときさ」

やがて、公園のまん中で、白い年寄りネコが、挨拶をはじめました。
「ねこようびのみなさん、きょうの一日は、ネコとしてりっぱにすごしてください。ネコの役割を果たしたものから人間にもどれます。のんびりしていると、いつまでも猫のままですよ。ではそれぞれに目標をもって散らばってください。ニャんゴロ」
ねこたちは、あっちの家のかげ、こっちの細道へときえていきました。
「じゃあな」
「またね」
「学校であおうぜ」
友だちネコも行ってしまいました。
(まいったなあ、ネコとしてりっぱになんて、いったいどうすりゃいいんだ)
太郎ネコが公園をでていこうとしたとき、ひとりのおじいさんがやってきて、日当たりのよいベンチにこしをかけました。ときどき公園でみかけるおじいさんです。
「ほお、かわいいネコじゃなあ。ほれ、こっちへこい。ほれ」
太郎ネコをみつけたおじいさんは、手招きをしたので、そばに行くとゴツゴツした両手で太郎ネコをだきあげました。
「そうかそうか。おまえもひとりぼっちか。おたがいにさびしいなあ」そういってやさしく背中をなでてくれました。
「ここでこうやって、子供たちをながめているのが、わしの一番のたのしみさ」
そういえば、太郎たちが遊ぶのをいつもニコニコとながめていました。でもみんなは、このおじいさんのことをボケじいさんとよんでいました。いつもへらへらと笑っていて、頭がへんなおじさんだと思ったからです。やがておじいさんは、そばにあったコンビニの袋からおにぎりをだして食べ始めました。
「わしの朝ごはんじゃ。おまえも食べるか?」
でもとそのとたん、太郎ネコは膝のうえから放り出されました。おじいさんがベンチから転がり落ちたのです。むねをおさえてうーんうーんとうなっています。 (たいへんだ。のどにつまったらしいぞ)
太郎ネコは誰かを呼ぼうかとあたりを見回しました。でも今日に限ってだれもいません。太郎は道路に飛びだしました。ちょうどそこにジョギングのおじさんがきたので太郎はとびつきました。
ニャ・ニャーン (おじさん、たすけてよ)
「うわっ、いてて、なにするんだ」おじさんは怒ってけとばしてから行ってしまいました。
つぎに自転車のかごに荷物をつんだおばさんがきたので、カゴにとびのりました。
ニャーンニャーン (おばさん、おじさんがたいへんだよ)
おばさんはびっくりして自転車といっしょにひっくりかえってしまいました。
「やだね、なんてネコだろう。まったく」おばさんも自転車でさっさと行ってしまいました。
(こまったなあ。どうしよう) 太郎ネコは次から次へと通る人にとびついたので、とうとう交番のお巡りさんとんできました。
「あ、あれだな、きょうぼうなネコがいると通報があったのは」
おまわりさんは太郎ネコをみつけると、棍棒をふりかざしておいかけてきました。太郎ネコはとびつこうと思いましたが、反対にベンチの所まで走ってにげてきました。そして、ベンチのそばまでくると、おじさんのところにチョコンとすわりました。
太郎ネコを追いかけてきたお巡りさんは、苦しんでいるおじいさんを見つけてビックリ!急いで救急車をよびました。そしてまもなくおじいさんは病院に運ばれていきました。
ニャー (よかった)。太郎ネコはほっとしました。でももうクタクタにつかれていたので、さっきのベンチにねころがりました。おひさまがポカポカとあたって、とても気持ちがいいのでぐっすりとねむりこんでしまいました。

「太郎、太郎! こたつで寝ていたら風邪をひくよ。ほら」お母さんの声です。
(にゃーん?) 目をさますとコタツのなかでした。
「あっお母さん、病院に運ばれたおじいさんんはだいじょうぶだったの?」
「えっ、どこのおじいさんのこと?」 (??? 夢だったのかなあ…)

次の日、友だちと公園に行くと、あのおじいさんがベンチにすわっていました。
「こんにちは。おじいさん。もう大丈夫ですか?」 
太郎が声をかけるとおじいさんはびっくりした顔をしましたが、うれしそうに大きな声で笑いました。
「八ツ 八ツ 八ツ ありがとさんよ」
そう言ってこっくりと頭をさげました。するとほかの友だちも集まってきて、こんにちはとあいさつをしました。
おじいさんは、なんどもなんどもこっくこっくりして笑いました。 おわり

※ 2002年(平14)、「第14回リブラン創作童話」で佳作入選したものです。
  最優秀賞と優秀賞2作は「こころの小箱」として童話本となり、㈱リブラン社
  がより多くの子供たちに豊かな心を・・・と寄贈・届けられます。 




このページのトップへ