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 ニャンと気ままに…♪   

🌸日常生活の雑感と他愛のない詩など小作品を紹介します       comment もお寄せ下さいね。      

77. 「待合室」

  「待合室」

 長い時間が過ぎていた
 診察室のドアがあいて
 看護士が声をあげた
 「○○○○さーん」
 待合室の長椅子の人たちが
 一瞬顔をあげるが
 すぐに落胆したように
 小さなため息をついて
 床に視線をおとした
 朝から幾度となく
 繰りかえす儀式のように

 診察室のドアがあいて
 看護士が声をあげた
 「○○○○さーん」
 ある有名な女優と同じ名を呼んだ
 みんなが一斉に顔を上げて
 名前の主を探そうとしたとき
 一人の老婆がひどくゆっくりと
 杖を頼りに立ち上がり
 おぼつかない足取りで
 診察室へと向かっていった
   …だよね
 だれもが隣人と顔を見合わせた
 まるで十年来の知己かのように
 はにかんだ笑みを浮かべて



 
病院に足を運ぶことが多くなりました。
私自身のことではないのですけどね。
いえ…実は私も爆弾を一つ抱えているっちゃ(^_-)-☆

たまに詩のような情景があります。
えっ…と思うような名前が呼ばれたりすると
ついご本人を確認して心の中でクスっとしてね。
まあそれくらいの楽しみがないと、待合室で
何時間も座っているのはたいへんです。

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76. 「殺人」

「殺人」

私は人を殺してしまった
確かな手ごたえはなかったけれど
誰かを殺してしまったらしい
一人 二人 いや何人かが
追いかけてくるのが分かる

私は必死で逃げる
どこか中近東を思わせる
崩れかけた古い街並みを
声にならない声をあげて
スローモーションで逃げている

ピストルの弾が左肩をかすめて
白い建物の壁に穴をあけた
ピシュとも音はしなかったが
壁がホコリを上げて崩れたので
それが分かった

行く手に小さな戸口があった
とっさに体を丸めて潜り込むと
そこは生まれ故郷の古い台所で
母がカマドに這いつくばり
火加減を覗いていた
ただいまとも言わず
おかえりとも言わないで
何ごともなかったように
私は食卓についた

ところで私はだれだっけ?

そう思ったとたん目が覚めた
たっぷりと汗をかいていて
左腕は五十肩の鈍い痛みだ
私は夢の中でいったい誰を
殺してきたのだろう
どれほどの憎しみを
夢の中まで引きずっていったのか
それとも私を恨んでいる人への
自己防衛の殺人だったのか

思い当たる人が一人や二人
いないでもないが…


※夢ってどうして恐いとか苦しいとか嫌なものが多いのでしょうね。不思議。
 

  

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74. 「鹿威し」

 「鹿威し (シシおどし)」

 幼い頃のふるさとに
 どかどか雪がつもりました
 雪は 色を消しました
 雪は 匂いを消しました 
 雪は 音を消しました
 孟宗竹で作られた鹿威しが
 時おりコーンと響くのも
 雪の日はおやすみです

 コーン … コーン
 コーン … コーン

 寒い夜です
 わたしは布団にもぐります
 それからゆっくり数えます
 切り落とされた竹筒に
 水がたっぷり注がれて
 それからゆっくり傾いて
 コーン … と
 聞こえる筈のない雪の夜
 それでもイチからもう一度
 ゆっくりゆっくり数えます

 山のくぼみでイノシシも
 やっぱり数えているだろうか
 コーン コーンが聞こえない
 不思議な夜を 添い寝して
 夢にドングリ・栗の実が
 ひとコロ ふたコロ さんコロリン
 そろそろコーンと鳴るような
 そんな気がして 目を上げて
 耳を澄ましているような…

シシオドシ…ご存知ですか?
日本庭園に造られるものは上品なものですが
山でイノシシやシカを追い払うシシオドシは
太い孟宗竹で作られていて、コーンという音も
山々に響くような大きな響きがあります。
でも雪が深く積もった夜などは聞こえてこないのです。


冬は山の水も枯れてしまうのでしょう。
冬は被害にあうような作物も少なく、動物たちも冬眠しているのかもしれませんね。

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73. 詩「鳩よ」

   「鳩よ」

 三〇羽ほどの鳩の群れが
 秋の雲を背にして輪を描いている 
 右旋回から 突然左旋回へと
 だだっ広い関東平野の
 野原の一軒家の上空で
 観覧自由のマスゲームを
 鮮やかに繰り広げている
 あれは多分レース鳩か

 鳩よ
 戦国の世では伝書鳩となり
 血生臭い文書も運んだのだろう
 足や背中に括りつけられた
 文字の重さを知る由もなく
 ひたすらに目的地へと羽ばたいた
 たまには恋文なども運んだろうか
 ―御目文字致したく候―
 などと書かれた文を固く結ばれて
 足首が熱くなったことなども

 新聞社のデスクには
 事件現場写真のフィルムを届け
 病院の窓口には緊急の血清を…
 その明晰な脳に畳み込まれた
 壮大な地図を眼下に広げ       
 小さな影を水や大地に落とし      
 稲穂の煌めく波に励まされて    
 一直線に彼の地を目指した鳩たち

 携帯電話や電子機器がやたらと
 電磁波をまき散らすこの乱世
 戻りたいのに戻れないまま
 駅や公園に群れる鳩の群れよ 
 思い出してほしい
 あまた鳥類から選び抜かれた誇りを
 思い出してほしい
 その便りを待ち続けていた人々を
 思い出してほしい
 逆風に向かう肩羽の心地よい痺れを
 思い出してほしい
 ひたすら目指すしかなかった情熱を

 いまフワリと歩道に舞い降りた鳩よ
 おまえの類まれなる帰巣本能を
 キリッと蘇らせる手立てはあるのか?
 その尊い能力と使命に目覚めたならば
 鋼のような足首が耐えられないほど
 熱くなる そんな手紙を 
 どこぞの誰かに届けてほしいのだ
 

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67. 詩「せつない」

   「せつない」

  U字磁石は
  せつないな
 
  ひかれあっているのに
  くっつきたいのに
  こんなに近くで
  見つめあっているだけ
 
  手をのばしても届かない
  わたしと
  夜空の星のように
  あなたが
  とおいのです

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